痩せているのに糖尿病?女性の低体重「FUS」を知っていますか
糖尿病の栄養相談で患者さんとお話ししていると、
ここ数年、痩せている方が増えていることを実感しています。
私が管理栄養士になったばかりの約25年前には、
「痩せているのに血糖値が気になる」という方を意識することは、今ほどありませんでした。
食事も、体型も、私たちが思っている以上に、社会の影響を大きく受けているのかもしれません。

今回は、なぜ「痩せているのに糖尿病?」ということが起こり得るのか、
そして女性の健康を守るために、食事や体重をどのように考えたらよいのか
について、管理栄養士の視点からお伝えします。
「痩せているから健康」と思っていませんか?
「糖尿病は太っている人がなりやすい病気」
「痩せているから生活習慣病の心配はない」
そんなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際には、
体重が軽い女性にも血糖値や糖代謝に関する問題がみられることがあります。
「体重が軽い=高齢の方」と思われた方、
もちろん、そのような方にもお会いしますが、
私が最近特に気になっているのは、閉経前の若い女性です。
痩せている=健康」とは限りません
健康のために体重を管理することは大切です。
しかし、女性の場合、「体重を減らすこと」ばかりに目が向いてしまうと、
必要なエネルギーや栄養素まで不足してしまうことがあります。

日本肥満学会によると、
日本の20代女性では約2割(5人に1人)がBMI 18.5未満の低体重(痩せ)に該当します。
低体重や低栄養は、骨量の低下や月経周期の異常など、
女性の健康に関わるさまざまな問題と関連しています。
つまり、
「体重が軽いから健康」ではなく、
「その体重をどのような身体の状態で維持しているのか」
を見ることが大切なのです。
日本では、若い女性の「痩せ」が大きな健康課題となっています。
2025年、日本肥満学会は、
女性の低体重や低栄養に伴うさまざまな健康問題を包括的に捉える新しい概念として、
女性の低体重/低栄養症候群
(Female Underweight/Undernutrition Syndrome:FUS)
を提唱しました。
女性の低体重「FUS」とは?
FUSは、Female Underweight/Undernutrition Syndromeの略で、
日本語では「女性の低体重/低栄養症候群」と表現されます。
日本肥満学会を中心とした複数の学会の専門家によるワーキンググループでは、
閉経前までの成人女性を中心に、低体重や低栄養を背景として、
骨量低下、月経周期異常、体調不良など、
さまざまな健康上の問題が生じる状態を一つの症候群として捉える考え方が示されています。

ここで大切なのは、FUSを単に「痩せている女性」のことと考えないことです。
体重やBMIだけを見るのではなく、
- 十分なエネルギーを摂取できているか
- 必要な栄養素が不足していないか
- 筋肉量が保たれているか
- 月経周期に変化がないか
- 骨の健康が保たれているか
- 疲れやすさなどの体調変化がないか
など、女性の身体を多面的に捉えることが重要です。
なぜ、痩せていても血糖値が気になるのでしょう?
「糖尿病は太っている人に多いのでは?」と思われるかもしれません。
確かに、肥満は2型糖尿病の重要なリスク因子です。
一方で、日本人では、肥満がなくても糖代謝の異常がみられることがあります。
その背景の一つとして注目したいのが、筋肉量です。
筋肉は、食事から摂ったブドウ糖を取り込んで利用する重要な組織です。
そのため、体重が軽くても筋肉量が少ない場合には、糖代謝に影響する可能性があります。

日本人の若年・中年女性を対象とした2024年の研究では、
非肥満・非糖尿病の女性において、
身体の大きさに対して筋肉量が少ないことが、インスリン感受性の低下と関連していました。
また、中年女性では、筋肉量が少ない群で食後の血糖値がより高く、
血糖値を調整するためのインスリン分泌が十分に代償できていない可能性を示す結果も報告されています。
つまり、
「体重が軽い」ことと「糖代謝が良好」であることは、同じではないのです。
「体重」だけではなく「身体の中身」を見る
例えば、同じBMI 18.0の女性でも、
「食事をしっかり摂り、筋肉量も保たれている人」と、
「食事量が少なく、筋肉量が低下している人」
では、身体の状態は同じとは限りません。
だからこそ、体重やBMIだけで判断するのではなく、
食事、筋肉、月経、骨、血液検査などを含めて
身体全体を見る視点を持つようにしましょう。
これは、FUSを考えるうえでも大切な考え方です。
女性の「痩せ」は、糖尿病だけの問題ではありません
低体重や低栄養が続くことで心配されるのは、糖尿病だけではありません。
- 月経周期の乱れ
- 無月経
- 骨量の低下
- 骨粗鬆症
- 筋肉量・筋力の低下
- 栄養素不足
- 疲れやすさなどの体調不良
など、さまざまな問題につながる可能性があります。
日本肥満学会も、女性の低体重・低栄養について、
骨量低下や月経周期異常などを含めた包括的な健康課題として捉えています。
また、これから妊娠を考える女性にとっても、適切な栄養状態を保つことは大切です。
「今、何kgなのか」だけではなく、
「将来の自分の身体をつくるために、十分な栄養を摂れているか」
という視点を持ってほしいと思います。
こんなときは、一度食生活を見直してみませんか?
次のようなことが気になる方は、
ご自身の食生活や身体の状態を振り返ってみましょう。
- BMIが18.5未満である
- ダイエットのために食事量を減らしている
- 主食を極端に減らしている
- 食事を抜くことがある
- 「太るのが怖い」という気持ちが強い
- 月経周期が乱れている
- 疲れやすくなった
- 筋力が落ちたと感じる
- 健診で血糖値やHbA1cについて指摘された
- 過去に極端なダイエットを繰り返している
これらに当てはまったからといって、FUSというわけではありません。
「痩せているから問題ない」と決めつけず、自分の身体の状態に目を向けることが大切です。
「痩せる」から「健康な身体をつくる」へ
女性の健康を考えるとき、体重は一つの指標にすぎません。
必要なエネルギーを摂り、栄養素を十分に確保し、筋肉を維持する。
そして、月経や体調の変化にも目を向ける。
そうした積み重ねが、今の健康だけでなく、将来の健康にもつながっていきます。
女性の身体は、ライフステージによって大きく変化します。
だからこそ、体重の数字だけではなく、
食事・筋肉・ホルモン・骨・代謝などを含めて、自分の身体を考えることが大切なのです。
それが、今の健康だけでなく、これからの健康を守ることにつながります。
女性の健康を、食事から。一緒に考えていきましょう。
・日本肥満学会「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)ステートメント」
・Tamura Y, et al. Female Underweight/Undernutrition Syndrome (FUS): An Emerging Health Concept in Premenopausal Women. J Obstet Gynaecol Res. 2026.
・Minato-Inokawa S, et al. Low muscle mass is associated with low insulin sensitivity, impaired pancreatic β cell function, and high glucose excursion in nondiabetic nonobese Japanese women. Metabol Open. 2024.









